なぜ夢を見るのか。眠っている間に訪れる世界について、科学がわかっていること

毎晩、頼んでもいないのに、私たちの脳は眠っている間にひとつの物語を組み立てています。すぐに消えてしまうものもあれば、一日中心に残るものもあります。あの中では一体何が起きているのでしょうか。睡眠の研究は何十年も続けられており、まだ解明されていない部分はあるものの、なぜ夢を見るのか、そしてあの夜の映像がどんな役割を果たしているのかについては、確かな発見がいくつも積み重ねられています。ここでは、その内容を落ち着いて振り返ってみましょう。
そもそも夢とは何か
夢とは、眠っている間に心が体験する感覚的・感情的な出来事です。映像や音、感触が、時には目覚めているときよりも鮮明に感じられることもあります。夢は一日の出来事をそのまま録画したものではなく、記憶や恐れ、願望、断片的な情報を脳が新しい形に組み合わせたものだと考えられています。
誰もが夢を見ているとされていますが、覚えているとは限りません。人生のうちかなりの時間を夢を見て過ごしていると考えられていますが、記憶にはほんの断片しか残らないこともあります。忘れてしまうことは、その夢に意味がなかったということではありません。脳が、何を残し何を手放すかを選んでいるだけなのです。
レム睡眠、夢の主な舞台
特に鮮明な夢の多くは、レム睡眠(急速眼球運動を伴う眠り)の間に見られるとされています。この状態では、脳は起きているときとほぼ同じくらい活発に働く一方で、体は夢の中の動きをそのまま行わないよう、麻痺した状態が保たれます。まぶたの下で目が動き、呼吸は速くなり、視覚や感情に関わる脳の領域が活性化します。
レム睡眠以外の段階でも夢を見ることはありますが、その場合は短く、物語としてのまとまりが少ない傾向があります。一晩の間に浅い眠り、深い眠り、レム睡眠が何度も入れ替わり、それぞれが心と体の健康に異なる形で関わっていると考えられています。
眠っている間に記憶は整理される
睡眠、特にレム睡眠の働きの中でも特によく調べられているのが、記憶の定着です。眠っている間、脳はその日学んだことを見直し、役立つつながりを強め、必要のない情報を手放していきます。まるで、一日の終わりに書類を整理してしまうような作業に似ています。
学生や音楽家、スポーツ選手を対象にした研究では、何かを学んだ後にしっかり眠ることで、翌日のパフォーマンスが向上することが示されています。夢は、たとえ内容をはっきり覚えていなくても、この記憶の整理作業が目に見える形で表れたものなのかもしれません。
感情と向き合う手段としての夢
科学的な裏付けが比較的しっかりしているもうひとつの考え方は、夢を見ることが強い感情を処理する助けになるというものです。レム睡眠の間、脳は感情のこもった体験を再び体験しますが、ストレスに関わる物質のレベルは低く保たれるため、記憶そのものを消さずに、少しずつその感情の強さを和らげていけると考えられています。
つらい時期の後に、同じような状況の夢を繰り返し見ることが多いのも、また、よく眠れた翌朝には悩みごとが少し軽く感じられるのも、この働きによるものかもしれません。睡眠が何度も中断されると、この感情の調整がうまくいかず、翌日の気分に影響が出やすくなるとされています。
科学と個人的な意味づけのあいだで
科学は、夢に登場する一つひとつの象徴に決まった普遍的な意味があるとは認めていませんが、だからといって夢を無意味なものとして片づけているわけでもありません。歴史を通じて多くの文化や伝統が、夢の中に心配事や願望、内面の葛藤の手がかりを探してきました。そうした象徴的な読み解き方は、自分自身を知るための有効な手段になり得ます。
もっとも誠実な向き合い方は、両方の視点を大切にすることかもしれません。夢が記憶や感情という実際の脳の働きから生まれることを理解しつつ、その映像が自分にとって何を意味しているのかを、絶対的な答えとして決めつけたり、逆にすぐに切り捨てたりせず、静かに考えてみることです。
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よくある質問
›なぜ夢を覚えていないことがあるのですか。
眠っている間、脳は何を残すかを優先的に選んでいるため、夢の内容の多くは自然に手放されていきます。レム睡眠の途中で目覚めるか、途切れずに眠り続けるかによって、記憶として定着するか、すぐに消えてしまうかが変わってくるとされています。
›夢はすべてレム睡眠中に見るのですか。
いいえ。長く筋道立った夢の多くはレム睡眠中に見られますが、それ以外の段階でも夢を見ることがあり、その場合は内容が短く断片的で、起承転結のある物語のようにはなりにくい傾向があります。
›夢を見ることには脳にとって何か役立つ働きがあるのですか。
そう考えられています。記憶の定着や感情の処理を助けているとされ、理論によっては、体が休んでいる間に状況を疑似的に体験したり、創造的に問題を解決したりしているのではないかとも言われています。
›夢はなぜ、あんなに筋の通らない不思議な内容になるのですか。
眠っている間、脳は目覚めているときの論理的なルールに縛られずに記憶や考えを組み合わせるため、人物や場所、状況が思いがけない形で混ざり合い、起きているときにはあり得ないような展開になりやすいとされています。